2019年8月8日木曜日

「AI革命」と「IT革命」の違い


最近よく「AI革命」という言葉を耳にします。
AI革命も IT革命のようなインパクトを社会に及ぼすのは確実でしょう。
ただ、ベンチャー企業として両方の「革命」に取り組んで得た感触としては、両者はかなり異質なものです。

結論から述べると、ITは誰でも参加できたが、AIは強者しか参加できないというのが私の実感です。

IT革命と言われたものは、それこそ街のパン屋さんがホームページを作る、といった小さな需要があちこちに生まれ、それに中小零細企業やプリーランスの人が制作を受託するという、裾野の広い変革だったと思います。導入も参入も敷居が低かったのです。

そのことによって、社会にITが大きく広がったのが2000年代初頭でした。その後、SNSが出始めた頃(2010年代以降)から、導入も参入も、徐々に敷居が上がっていき現在に至ります。

さて一方、AI革命の方はどうでしょう。考えてみれば、街のパン屋さんがAIを導入するなんてことは、そうそう起きないことがわかります。導入できるのは、大手自動車メーカー(自動運転)、大手製造業(工場ラインの監視)、大手金融機関(投資の予測、与信審査)、大手通販会社(販促)・・・

そうなんです。

大量のデータを持っている企業しか、導入ができないのです。
ほぼ必然的にAIを利用できるのは大手企業だけとなります。導入の敷居が圧倒的に高いのが、AI革命です。

AIを提供する側の会社も、技術の高度化が進んでいるので、一握りの会社に、大手からの依頼が集中します。

以前のIT革命と比べてみましょう。IT革命初期では、趣味レベルのHTMLでホームページが作れる程度の人でも参入ができて、いろんな会社が、都会にも地方にも勃興しました。

AI業界ではそんな話はあまり聞きません。GAAFAのニュースばかりです。


まとめると、
「IT」は幅広い人間にチャンスを与えた技術。
「AI」は強者がますます強くなる技術。
ということになります。

当社としては、強者になるしかないので、技術の蓄積とアルゴリズムの工夫をこれからも進めていくことに変わりはありません。そして裾野を広げる取り組みも必要だと考えます。

AIで社会が便利で豊かになるというのは一面性に過ぎず、強者がますます強くなり、資本主義を押し進めるものだという面を、厳しい現実として認識する必要があります。

ちなみに国別比較をしてみて、現状の日本は強者ではありません。
AIによる明るい未来への道のりは遠いです。