音楽の海賊ダウンロードが違法化されて一ヶ月が経ったが、
「CDの売上が増える」ということは起きなかった。
これは、先行して厳罰化を行ったフランスと同じ現象である。
フランスでは、違法コピーは半減したが、売上も減少した。
ここは
「著作者の利益を保護するためには違法ダウンロードを取り締まるだけでいいのか?」について今一度考えるいい機会だろう。
音楽(シングル)の価格を見てみよう
1980年代アナログ盤:300円(現在でいうと1200円くらい)
1990年代CDシングル:950円
2000年代着うたフル:400円
2010年代iTunesなど:200円
上記は代表例だが、徐々に逓減しているのがわかる。
一つの楽曲を聴くための追加コスト(効用)はどんどん下がっている。
この流れが法則であるならば、音楽ソフトの価格はゼロに近づくことになる。
音楽は「聴き放題」の時代へ
すでに潮流はある。
- 月9.99ドルで1800万曲を聴き放題&オフラインプレイリスト対応という「Spotify」
- 3000万曲聴き放題でクラウド対応のマイクロソフト「Xbox Music」
聴き放題なのは「ストリーミング」のみであって、データの保存はできないし、月額固定料金はかかる。
だが、曲を聴くための追加コスト(効用)はゼロだ。
過去の音楽ソフト販売の状況はいわば「従量制」だった。
そして、近未来は「聴き放題」に移行する。その流れは変えようもない。
ちょうどインターネット料金が「従量制」から、常時接続に変わったのと同じ変化だ。
経済原則が変わりつつある
アマチュアでも、全世界に楽曲を公開できる今は、多様性の時代(=ロングテールの時代)そのものだろう。そういう市場ではでは、これまでとルールが変わる。たとえ無料であっても、聴いてもらうことの価値が大きくなるのだ。
前項のストリーミング無料配信は「広義のプロモーション(宣伝)」である。決して、コンテンツの自殺行為ではなく、正しい生存戦略である。
楽曲データを「ダウンロード」したり、CDパッケージを購入したりは依然として有料であり続けるし、その裾野を広げることにつながるからだ。
そう考えると、Youtubeにアップロード(違法)されている楽曲動画も、売上に実はプラスだったのではないだろうか。事実、その可能性を視野に入れて、宣伝に利用している歌手・アーティスト・レコード会社は、海外で増え続けているし、他社より売上が落ちたという話もない。
今後どうするべきか
違法アップロードも、違法ダウンロードもいけないことだ。そのことは論を俟たない。
ならばなおさら、日本のレコード各社はYoutubeあたりにもっと積極的に、楽曲を公式に公開していくべきだろう。鍵は、無料と有料ユーザーとの差別化(プレミア化)の工夫にあるだろう。
例:AKB握手券、パッケージDVD封入特典、音質違い、アレンジ違いなど。いっそ、コンサートチケット同梱でもいいし、ファンクラブ会員権同梱もいい。コツは、徹底的に優遇することである。
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≫Youtubeでの違法コピーは、むしろ収益チャンス
≫PDF: http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/11j010.pdf
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